月ごとの統計2,690本の全ペアで「Aが平年から外れた月の1〜3か月後にBも外れる」を数え、85,314通りを全部検定した。通った19,531本が乗っている「出来事」の年を並べると、1989・1997・2014・2019年と2022年以降に山が立つ。消費税の4回と、直近の物価上昇である。全国が一斉に動いた年を除くと残りは1,736本、物価どうしを除くと409本。その8割は同じ統計の品目どうしだった。桶屋は、出てこなかった。
統計2,690本を、何も指示せずに眺めさせた
当サイトの裏側には、政府統計や公開データから集めた月ごとの系列が2,690本あります。消費者物価の品目757本、家計調査の支出678本、人口動態387本、毎月勤労統計300本、家計の購入数量206本、運輸や娯楽の実績、景気指標、市場、気象、それに天体の位置と暦(165本と7本)。1970年代以降のものが大半で、長いものは1950年代まで遡ります。
これまでの記事では、「暑い月はアイスが売れる」のように先に問いを立ててから検証してきました(財布は天気でできている、あなたの街の財布)。今回は逆です。問いを渡さない。機械には全系列を渡し、「どれかが平年から大きく外れた月、その1〜3か月後に別のどれかも外れる」という組を、全ペア(約2,900万通り)について数えさせました。既に見つかっている法則と、同じ統計の親子(牛肉と肉類のような集計の関係)は、始める前に辞書として除いてあります。問いは、残りに何があるかです。
数え方の目安は、回す前に固定しました。平年からのずれが標準偏差の1.5倍を超えた月を「外れ」とし、同時に外れた月が8回以上・重なりが48か月以上ある組だけを候補にする。候補は85,314本。そのすべてに、月をずらして偶然どれだけ出るかを500回測る検定(置換検定)を掛け、1%の水準を通った19,531本を「ありそうだ」と呼ぶことにしました。機械の順序のまま、人は一本も選んでいません。
見つかったのは、消費税と物価上昇だった
19,531本の「ありそうだ」は、どんな月に乗っているのか。同時に外れた月を前後6か月以内で束ねて「出来事」とし、その始まりの年を数えたのが次の図です。
4本の山は、消費税の導入と引き上げの年です。1989年4月に3%、1997年4月に5%、2014年4月に8%、2019年10月に10%。物価の品目が一斉に跳ね、家計の支出は駆け込みと反動で一斉に揺れる(駆け込みの中身は増税の前夜、日本人は何を買いだめしたかに書きました)。右端の山は2022年以降の物価上昇で、延べ数では4回の増税をあわせた数に近い。何かがずれると別の何かもずれる——その「何か」の大部分は、国じゅうの統計が同じ月に一斉に動いたことでした。
19,531本の族の組を見ても同じことが言えます。物価→物価が14,614本で75%。物価→家計1,316本、家計→家計1,194本、家計→物価620本と続きます。物価を一切含まない辺は2,464本しかありません。
一斉に動いた年を取り除くと、何が残るか
ここから先は機械の出力ではなく、私たちの読み方です。全国が一斉に動いた年を出来事から外して、それでも3回以上・3つ以上の年でずれが重なった辺だけを数え直しました。外した年は、増税の1989・1997・2014・2019年、感染症で暮らしが止まった2020〜2021年、物価上昇の2022〜2026年です。
| 段 | 辺 |
|---|---|
| 置換検定に掛けた候補 | 85,314 |
| 検定を通った「ありそうだ」 | 19,531 |
| 増税の4年を出来事から外す | 11,259 |
| さらに2022〜2026年を外す | 2,151 |
| さらに2020〜2021年を外す | 1,736 |
| うち、物価を含まない辺 | 409 |
| うち、同じ統計の内部(景気→景気、家計→家計など) | 330 |
残った409本の中身は、機械の並び順のまま拾うとこうです。牛肉の支出が外れた翌月、合いびき肉の支出も同じ向きに外れる(1996年・2001年・2005年・2019年)。鉱工業の生産財出荷指数が外れた翌月、輸出数量指数も外れる(2001年12月・2008年8月・2010年3月……)。輸出数量指数が外れた翌月、鉱工業生産指数も外れる。どれも同じ統計の品目どうしか、教科書に載っている景気の連動です。409本のうち330本は同じ族の内部でした。風と桶屋のような、族をまたぐ見えない糸は、ここには出てきません。
星は出てきたか
占いのサイトですから、この問いは避けられません。天体の位置が上流にある辺は、19,531本のうち26本でした。山羊座の太陽と映画・演劇の入場料、木星の在泊と旅行、冥王星の位置と私立中学校の授業料。ただし乗っている出来事を見ると、2020年と2022〜2023年の一斉の動きか、1993〜1995年の3年続きの月です。後者は数十年周期でゆっくり動く天体の1つの波を、6か月の隙間で3つに切ったにすぎません。一斉に動いた年を外して残るのは2本(冥王星の位置と大人用サンダルの購入量、射手座の太陽とスポーツ観覧料)で、いずれも数十年に数回の重なりです。確認できるデータが来るまで、候補のまま棚に置きます。
桶屋がいない理由——糸が無いのではなく、風が強すぎる
月ごとの全国統計で「風→桶屋」の糸が見えないのは、糸が存在しないからとは限りません。全国が同じ月に一斉に動く出来事の方が、桁違いに大きいのです。増税の月には、2,000本を超える系列の3割前後が同時に外れます。その中で、風と桶屋を細くつなぐ糸があったとしても、月次の全国合計では一斉の動きに埋もれます。
糸を探すなら、単位を変える必要があります。日ごとの動きか、街ごとの動きです。実際、全国52都市の家計簿と気象データに切り替えると、東日本で見つけた法則が西日本でも再現する例が85本ありました(あなたの街が暑い月、あなたの街の財布はこう動く)。桶屋は、全国の月次ではなく、街の中にいるのかもしれません。
誠実な線引き
- 既知の法則は始める前に除いてあります。当サイトが既に確認した法則(20の法則・街の85法則)と、族どうしの組み合わせとして検証済みのものは辞書として外しました。「機械が見つけたのは消費税だけ」は、既に知っていることを除いた残りについての話です。
- 目安は回す前に固定しました。外れの閾値、候補の下限、検定の水準は事前に決め、出力を見てから動かしていません。19,531本は機械の順序のままです。
- 「一斉に動いた年を外す」は人の読み方です。外した年は本文に列挙しました。同じ年の一覧を使えば、誰でも同じ数に着きます。
- 確認はまだです。この検定は手元のデータの中で行ったもので、持ち出しのデータでの確認は2027年以降の新しいデータを待ちます。残った1,736本も「ありそうだ」の候補であって、法則ではありません。
- 人口動態の系列は集計に含めていますが、本文では扱いません。人が亡くなった出来事を読み物の題材にしない、というこのサイトの方針によります。
- データ総務省 消費者物価指数・家計調査、厚生労働省 毎月勤労統計・人口動態統計、経済産業省 鉱工業指数・特定サービス産業動態統計、国土交通省の輸送実績、内閣府 景気動向指数、気象庁、NOAA/GFZ の宇宙天気、自前の天体暦計算。月次・2,690系列。
- 方法平年(同暦月の直近5回の平均・13か月トレンド除去)からのずれ z の |z|>1.5 を外れとし、全ペア×ラグ0〜3か月の同時外れの持ち上がりを数え、月の循環シフトによる置換検定(500回・p≤0.01)。出来事は同時外れ月を前後6か月で束ねたもの。