測り方と、その限界
使ったのは、人口動態統計の婚姻届の月次件数と、経済産業省の葬儀業の取扱件数・売上高(いずれも政府統計)。それと当サイトの暦エンジンで計算した各月の六曜の日数です。「大安が多い月は婚姻届も多いか?」を、季節のクセを取り除いたうえで相関(ρ)にしています。
注意点がひとつ。これは月単位の推定です。「大安の日そのものに何件」という日別の集計は公開されていないので、月の顔ぶれから間接的に測っています。また六曜は6日で一周するため、ある六曜が多い月は別の六曜が少ない——順位の隣同士は影響し合うことも割り引いてください。
結婚ランキング — 大安の一人勝ち
| 順位 | 六曜 | 婚姻届との相関ρ | 読み |
|---|---|---|---|
| 1 | 大安 | +0.26(唯一の統計的有意) | 大安が1日多い月は、婚姻届が目に見えて増える |
| 2 | 赤口 | +0.10 | 有意ではない |
| 3 | 仏滅 | −0.06 | ほぼ無風 |
| 4 | 友引 | −0.07 | ほぼ無風 |
| 5 | 先勝 | −0.08 | ほぼ無風 |
| 6 | 先負 | −0.12 | 最下位。有意水準には届かず |
意外にも「仏滅を避ける」効果は月単位でははっきり出ません。動かしているのはほぼ大安への吸い寄せだけ。月の変化どうしを突き合わせる検査(差分)でも+0.30と痩せず、これは月次タイミングとして本物の動きです。
葬儀ランキング — 友引のぶっちぎり最下位
| 順位 | 六曜 | 葬儀件数との相関ρ | 読み |
|---|---|---|---|
| 1 | 仏滅 | +0.24 | 仏滅が多い月は葬儀が多い |
| 2 | 大安 | +0.14 | 弱い正(友引の少ない月の裏映りの可能性) |
| 3 | 赤口 | +0.10 | 有意ではない |
| 4 | 先負 | +0.04 | 無風 |
| 5 | 先勝 | −0.14 | 弱い負。翌日が友引になる日 |
| 6 | 友引 | −0.37 | 圧倒的最下位。友引が多い月は葬儀が明確に減る |
「友引に葬式を出さない」は、六曜の習わしの中でもっとも強く現実を動かしているものでした。売上高で測っても−0.39。しかも興味深いのは5位の先勝——先勝の翌日は必ず友引なので、「翌日に葬儀を送れない日」もつられて減っている、と読める並びです。
おまけ: 離婚は?
離婚届でも六曜を全部調べました。有意に出たのは友引の−0.16だけ。「友を引く」日には、別れ話も持ち出しにくい——葬儀ほど強くはありませんが、同じ向きの影が出ています。
これは「暦の力」なのか
違います。六曜は旧暦の足し算で機械的に決まる記号で(種明かしはこちら)、物理的な力はありません。動いているのは人間の側です。みんなが大安を選び、友引を避けるから、婚姻届の窓口と葬儀場のカレンダーが暦に同期する。統計が測っているのは、暦を信じる心が現実のスケジュールを動かす強さそのものです。
この結果(大安→婚姻は正、友引→離婚は負)は、2027年の新しいデータで答え合わせをする「予告済みの検定」として方向を固定・登録してあります。外れたら外れたと書きます。
追記(2026-08-16): 「本当の原因は別にある」説を全部試した
「大安の月に結婚が多いのは、実は景気やボーナスのせいでは?」——その疑いに答えるため、手元の全2,110変数(景気・求人・給料・物価・移動量・死因別死亡まで)を1つずつ差し引いて、大安→婚姻の相関が消えるか試しました。
結果: どの変数を差し引いても消えませんでした。友引→葬儀も同じく不倒。つまり「大安が多い月に婚姻届が増える」ことを、暦以外のもので説明する材料は、政府統計の中に見つからない——残る説明は「人が大安を選んでいるから」だけです。