水星逆行はシロ。仏滅も大安もシロ。ところが「友引」だけ、死亡事故が約7%少ないという数字が出ました。偶然として片づけるには惜しい顔つきをしているので、本ページの最後で再現検定の事前登録をします。占星術サイトが自分の商売道具を検定する、検証ラボ第5弾です。
誰も検定してこなかった領域
「水星逆行中は交通や通信が乱れる」——占星術で最も有名な警句です。SNSでは電車の遅延も待ち合わせのすれ違いも水星のせいにされます。では、実際のデータで確かめた人はいるのか。調べた限り、見当たりません。理由は簡単で、科学者は馬鹿らしくて検定せず、占いの業界は検定すると商売に障るからです。
当サイトはその隙間にいます。天体計算(水星の逆行期間、天体同士の角度)を毎日行い、一方で警察庁が公開する交通事故の個票データ(2019〜2024年、約186万件)も扱える。両方の道具を持つ者の義務として、検定しました。手法と装置の感度確認(雨の日の事故−4.9%を検出できること)は第4弾・満月の検証と同一です。
水星逆行 — 完全にシロ
| 逆行 | 該当日数 | 全事故の増減 | p値 |
|---|---|---|---|
| 水星逆行 | 424日 | +1.3% | 0.33(効果なし) |
| 金星逆行 | 127日 | −2.1% | 0.54(効果なし) |
| 火星逆行 | 164日 | −2.1% | 0.48(効果なし) |
水星が逆行していた424日間、事故は増えていません。死亡事故でも同じ。天体のハードアスペクト(緊張角)が集中する「占星術的な荒れ日」も検定しましたが、事故にも市場の荒れにも痕跡なし。水星逆行中も、いつもどおり運転して大丈夫です——たぶん誰も書いたことのない、データつきの公共サービスとしてお届けします。
六曜 — 仏滅も大安もシロ、のはずだった
次は日本の暦の迷信、六曜です。ここには占星術と違う理屈があり得ます。六曜そのものに力は無くても、人間が六曜で行動を変える(大安に式を挙げ、仏滅を避ける)なら、交通の流れが変わって事故率に痕跡が残るかもしれない——「予言の自己成就」の検出です。六曜は旧暦から計算する必要があるため、天体計算で旧暦(朔と中気)を再構成し、旧暦元日7年分との一致で検証してから使いました。
| 六曜 | 全事故 | 死亡事故 |
|---|---|---|
| 仏滅 | +0.4%(p=0.59) | −1.6%(p=0.54) |
| 大安 | +1.0%(p=0.13) | −0.1%(p=0.96) |
| 赤口 | −0.3%(p=0.60) | +0.5%(p=0.86) |
| 友引 | −2.0%(p=0.002) | −7.5%(p=0.004) |
仏滅に事故は増えず、大安に減りもしない。信仰による行動変化も、事故の統計には映らない——そう締めくくるはずでした。友引の行を見るまでは。
友引の謎
友引の日は、全事故が2%、死亡事故は7.5%少ない。全事故のp=0.002は、今回走らせた17本の検定の多重補正(p<0.003)すら生き残る水準です。
もちろん当ラボの流儀で疑いました。期間を前半と後半に割ると、全事故の効果は後半3年で消えます——これはいつもの「偽相関の死に方」なので採用しません。ところが死亡事故は前半−6.2%、後半−8.9%と、両方の期間で同じ向き・同じ規模で出続けている。これまで5回の検証で摘出してきたトレンド偽相関ともサンプル依存の偶然とも、明らかに顔つきが違うのです。
説明の候補も考えました。友引には「友を引く」の連想で葬儀を避ける習慣があり、多くの火葬場が定休日にしています。葬儀関連の交通が丸ごと消える日——しかし、それで全国の死亡事故が7%も動くとは考えにくい。月の満ち欠けとの混入も、満月の検証がシロだった以上、筋が通りません。現時点で、これは説明のつかない数字です。
だから、予告します(再現検定の事前登録)
こういうとき、いちばんやってはいけないのは「友引には本当に力があった!」と書くことです。17本も検定を走らせれば、偶然だけでも面白い数字は出ます。いちばん誠実なのは、まだ誰も見ていないデータで、この仮説だけをもう一度試すことです。
事前登録: 警察庁の2025年分の交通事故データが公開され次第、「友引の日は死亡事故が少ない(マイナス方向・p<0.05)」という仮説のみを、本ページと同一の手法で検定し、結果がどちらでも本ページに追記します。仮説と基準をデータより先に公開しておくことで、後出しの余地をなくします。(2026年8月10日宣言)
再現されれば、日本の暦の迷信が現実の交通統計を動かしているという、ちょっとした発見です。再現されなければ、それはそれで「p=0.004でも消えるものは消える」という、統計の教科書に載せたい実例になります。どちらに転んでも、続報をお楽しみに。
天測運勢台としての結論
水星逆行は、運転に関する限りシロでした。当サイトは今後も逆行を計算し、運勢の文章に「勢い任せを控えて」と書くことがありますが、それは統計的な警報ではなく、立ち止まる口実の提供です。凶日という物語は、事故統計ではなく、あなたが今日をどう過ごすかの側で働くもの——それが5回の検証を経たいまの、当サイトの答えです。そして友引の謎のように、まじめに検定したからこそ出会える「本物の宿題」があることも。
出典・関連ページ
- 交通事故データ警察庁 交通事故統計オープンデータ(2019〜2024年・約186万件)。政府標準利用規約に基づく利用。
- 天体計算・六曜自前計算(Swiss Ephemeris / pyswisseph)。六曜は朔と中気から旧暦を再構成し、旧暦元日7年分と照合済み。
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