惑星の引力は人に届いている?——届いています。2026年9月30日の計算では、木星はそばに立つ体重60kgの人の約40倍、金星は約30倍の力であなたを引いています(当サイトの天体計算)。
体の7割が水だから、月の影響を受ける?——月の引力で体の近い側と遠い側に生まれる差は、そばに立つ人が生む差の約3万分の1です。海に潮が起きるのは地球が大きいからで、体の大きさでは差がほとんど生まれません。水でも骨でも受ける差は同じです。
天測運勢台は引力をどう使っている?——今日と空の状態が似た過去の日を探すための座標の一部に、月と惑星の引力を使っています。引力が人の心に効くとは主張していません。
「星の引力が人を動かす」という話
「人の体は7割が水。だから海と同じように、月に引かれて心も満ち引きする」「生まれた瞬間の惑星の配置が、その人を形づくる」——占いの周りでよく聞く説明の多くは、どこかで引力に行き着きます。遠くの星が、目に見えない力で人を引っぱっている、というイメージです。
この記事では、その引力を実際に計算します。使うのは、このサイトが毎日の運勢のために自前で計算している天体の位置(NASA JPL の天体暦 DE440s)と、ニュートンの式1本だけです。
引力は本物で、計算できる
天体があなたを引く力(加速度)は、GM ÷ 距離の2乗で求まります。GM は天体の重さに万有引力定数をかけた値で、距離が2倍になれば引力は4分の1になります。2026年9月30日の天体の位置で計算すると、次のとおりです。
| 天体 | 引く力(m/s²) | 1m先に立つ60kgの人の何倍 |
|---|---|---|
| 太陽 | 5.9×10−3 | 約148万倍 |
| 月 | 3.6×10−5 | 約9,000倍 |
| 木星 | 1.6×10−7 | 約40倍 |
| 金星 | 1.2×10−7 | 約30倍 |
| 土星 | 2.4×10−8 | 約6倍 |
| 水星 | 7.0×10−10 | 約0.18倍 |
| 天王星 | 7.3×10−10 | 約0.18倍 |
| 火星 | 6.9×10−10 | 約0.17倍 |
| 海王星 | 3.7×10−10 | 約0.09倍 |
| 冥王星 | 3.1×10−14 | 約10万分の1 |
意外な事実:木星は、そばにいる人より強くあなたを引いている
比べる相手として、1m先に立っている体重60kgの人を置きました。この人があなたを引く力は約4.0×10−9 m/s²。表の右の列が、その何倍かです。
木星は約40倍、金星は約30倍、土星でも約6倍。引く力の大きさだけで比べるなら、「惑星の引力なんて、隣の人にも負ける」とは言えません。隣の人に負けているのは、この日の火星・水星・天王星・海王星・冥王星だけです。
よく言われる「出産に立ち会う人の引力のほうが、火星より強い」も、この日の配置では当たっています。ただし後で見るとおり、火星が地球に近づいた年には逆転します。
でも、体に効くのは「差」だけ
ここに大事な落とし穴があります。木星に引かれているのはあなただけではありません。足もとの地球も、周りの空気も、隣の人も、同じ向きにほぼ同じだけ引かれています。全員そろって同じように引かれる力は、感じることができません。国際宇宙ステーションの飛行士が、地球の引力の中にいながら浮かんで見えるのと同じ理屈です(ステーションごと落ち続けているため)。
体の中に何かが起きるとすれば、それは体の近い側と遠い側にかかる引力の差からです。これが「潮汐力」、海の潮を起こす力です。体の厚みを30cmとして、この差で比べ直すと、順位はまるで変わります。
| 相手 | 差(m/s²) | 1m先の人は、その何倍 |
|---|---|---|
| 1m先に立つ60kgの人 | 1.6×10−9 | — |
| 月 | 5.8×10−14 | 約2.8万倍 |
| 太陽 | 2.4×10−14 | 約7万倍 |
| 金星 | 1.3×10−18 | 約12億倍 |
| 木星 | 1.1×10−19 | 約150億倍 |
| 火星 | 1.7×10−21 | 約1兆倍 |
差で見ると、そばにいる人は月の約3万倍、木星の約150億倍。引く力では人に勝っていた木星も、体に効く分では比べものになりません。引く力は距離の2乗で弱まりますが、差は距離の3乗で弱まるからです。遠い星ほど、差はほとんど残りません。
「7割が水」への答え:海に潮が起きるのは、地球が大きいから
月が海の潮を満ち引きさせているのは本当です。ただ、潮を起こしているのも同じ「差」です。地球の中心と表面は約6,400km離れていて、その間に生まれる月の引力の差は、体の30cmで生まれる差の約2,000万倍になります。この差が何千kmにも広がる海の水を少しずつ寄せ、満ち潮と引き潮をつくります。
コップの水や体の中の水が月に向かって寄らないのは、差を生むだけの大きさがないからです。体の7割が水であることは、月との関係では何も変えません。水でも骨でも、受ける差は同じです。
星の引力は、日によってこれだけ変わる
距離が変われば引力も変わります。1990年1月から2026年9月までの毎日の天体の位置で、引力が最も強かった日と最も弱かった日を比べました。
| 天体 | 最も強かった日 | 最も弱かった日 | 強さの差 |
|---|---|---|---|
| 月 | 2016年11月14日 | 2020年3月24日 | 約1.3倍 |
| 太陽 | 1996年1月4日 | 2019年7月4日 | 約1.07倍 |
| 木星 | 2022年9月26日 | 2016年9月25日 | 約2.7倍 |
| 金星 | 2022年1月8日 | 1992年6月13日 | 約43倍 |
| 火星 | 2003年8月27日 | 2019年8月28日 | 約52倍 |
月が最も強かった2016年11月14日は、68年ぶりに大きく見えると話題になったスーパームーンの日です。火星の2003年8月27日は約6万年ぶりの大接近、木星の2022年9月26日は59年ぶりの最接近の日でした。自前の計算が、話題になった天文現象の日をそのまま指しています。
火星は大接近の日、そばに立つ人の約3.4倍の力であなたを引いていました。最も遠い年には約15分の1です。「そばの人と火星、どちらの引力が強いか」は、年によって勝ち負けが入れ替わります。
太陽の引力が1月と7月で7%ほど違うのは、地球が毎年1月の初めに太陽へ最も近づくためです。日本の冬が寒いのは距離ではなく、日差しの角度のためです。
天測運勢台は、引力をどう使っているか
天測運勢台の順位づけには、今日と「空の状態」が似た過去の日を探し、その日の記録を材料にする仕組みがあります。その空の状態をはかる座標の一部に、月と惑星の引力を入れています。引力は、その日の空を数字で書き表すのにちょうどよい物差しだからです。
ただし、引力が人の心に効くとは主張していません。ここまで見たとおり、体に届く差は、そばにいる人の足もとにも及びません。
引力を座標にしてみて、分かったこともあります。引力の近い日を探すと、「約1年前の同じ時期」がよく選ばれるのです。天王星・海王星・冥王星などの遠い惑星は、地球との位置関係がおよそ1年で一巡するため、1年前の同じころはこれらの距離がそろってよく似ます。星の引力で似た日を探すと、カレンダーが浮かび上がる——空の時計は、そのまま暦でもありました。
結論:引力は本物、意味づけは人の側に
星の引力は本当にあり、毎日計算できます。木星がそばの人より強くあなたを引いているのも事実です。けれど、体に何かを起こせるほどの差は生みません。
占いは、空に実在する数字に、人が意味を重ねてきた営みです。天測運勢台は、数字の部分を正直に計算し、意味づけの部分を占いとしてお届けしています。
出典・関連ページ
天体の位置: NASA JPL の天体暦 DE440s を Skyfield で計算(当サイトの天体計算エンジン)。天体の GM(質量×万有引力定数): JPL・IAU の値。表の数字は地球の中心から見た距離によります。比べる相手の人は、体重60kgを1点に集めたものとして計算しました。
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